こんにちは。
みなさんはスウェーデンと聞くと何を思い浮かべるでしょうか?
北欧特有の洗練されたデザインや雑貨、もしくは可愛らしい家具でしょうか。それとも、高い税率と充実した福祉制度だったりするのでしょうか?
スカンディナビア半島にある、少し日本人には馴染みが薄い、そんなスウェーデンの死生観がすごく面白いのでご紹介します。
スウェーデンの死生観とは?

どこか小洒落たイメージがあるスウェーデン。そんなこの国には「自然を享受する権利は皆にある」という自然観が存在します。
確かにスウェーデンを含む北欧諸国には、可愛らしい街並みと手付かずの大自然というイメージがあることからも、このような自然観があることについては頷くことができるでしょう。
このような特有の自然観から、スウェーデンでは「死者は森へ還る」という独特な死生観が存在します。終末期には高齢者に無理な延命治療をしないことも多く、これも自然な死を迎えるという価値観があるからです。
このようなスウェーデンの独特な死生観を体現した場所が、首都ストックホルムの郊外にある美しい墓地「スクーグスシェルコゴーデン」です。
スウェーデンの死生観を体現した、森の墓地「スクーグスシェルコゴーデン」
スクーグスシェルコゴーデンは、1994年に世界遺産に登録された墓地で「スウェーデン建築の父」と呼ばれるアスプルンド氏によって設計されました。アスプルンド氏は北欧建築に多大な影響を与えた人物としても知られており「ストックホルム市立図書館」を設計した人でもあります。
そんなアスプルンド氏によって手がけられたこの場所には、女優や作家、プロスポーツ選手など数々の著名人が埋葬されています。
北欧人にとっての精神的な故郷といえる「森」へと還る人間の運命を、直感的に悟らせる建築表現で、見た目にも美しいものとなっています。
そんな美しい森の墓地へと実際に訪れました。

まずはストックホルム中央駅から、地下鉄でスクーグスシェルコゴーデン駅へ。駅のデザインから洗練されているような気さえしてわくわくします。

駅を出て木々のある小道を抜けると、そこには美しい墓地の姿が。





スクーグスシェルコゴーデンには、このように自然と建築が混ざり合った、美しいお墓がたたずんでいます。
私たちの住む日本においてお墓は「死」を連想させることもあり、心霊スポットなどとして取り上げられたりと、少し不吉なイメージばかりで良いイメージを持つ方はあまりいないでしょう。
しかし、スウェーデンにおいては「死ぬと森へと還る」という死生観であったり、北欧の人にとっては森が故郷であり、死者は故郷へと還って行ったという考え方があるからか、この地はお墓であるにもかかわらず、不思議と暖かさのようなものさえ感じました。
また、スウェーデンでは終末医療が発達していて、寝たきりの老人がいないと言われています。これは高齢者の意思が尊重され、終末期にも1人での散歩や飲酒、喫煙さえも許されるんだそうで、これは人生を最後まで楽しむという考え方に基づいています。
こうした考え方や自然な死を迎えるという価値観から、スウェーデンでは無理な延命治療は行われず、みんな人生の最後は人間としての尊厳を保ったまま亡くなっていくんだそうです。この辺りの「人生の最後」の考え方も日本とスウェーデンでは大きく異なることがわかります。
森の墓地に不思議な温かみを感じたのは、このようなスウェーデン特有の死生観にも要因があるような気がしてなりません。
自然の静寂と暖かな太陽の光、そして美しい建築はこの地に穏やかな時の流れを生み出していました。
ストックホルム郊外にある世界遺産「スクーグスシェルコゴーデン」は美しく、そしてどこか暖かさのある素晴らしい場所でした。
ぜひ、訪れてみてくださいね!
その他、スウェーデンについてはこちらで色々ご紹介しています。
また、スウェーデンの死生観について興味を持たれた方は、こちらも参考にしてみても良いかもしれません。
森の墓地「スクーグスシェルコゴーデン」へのアクセス
ストックホルムの中心地からスコーグスシュルコゴーデンへは、地下鉄のグリーンライン「ファーシタ ストランド(Farsta Strand)」行きに乗り、Skogskyrkogården駅で下車。
駅から徒歩5分ほどで到着します。
実はある作品に描かれていた
今回ご紹介した森の墓地ですが、実は私は訪れた時にデジャブのようなものを感じていました。
と言うのも、なんとなくこの場所を知っている気がしたんですね。
そして後で調べてみると、重松清さんの「十字架」という物語の終着として、森の墓地「スクーグスシェルコゴーデン」が描かれているのです。
この作品は、いじめによって自殺した少年と残されたクラスメイトについて書かれた作品で、直接手は下していないけど、見て見ぬ振りをした傍観者の生き方なんかが書かれており、私は中学生の時に読み、命の重さについて深く考えさせられたのを覚えています。
そんな場所に知らず知らずのうちに5年越しに訪れたのは何かの縁だったのかもしれません。
物語の中で自殺した少年の魂も、スウェーデンの死生観のように森へと安らかに還ることができていたならいいな、なんて思います。
ストックホルムの観光については、下記の記事もどうぞ
